【レポート】プログラミングで問題解決~ポストはなぜ赤いのか?~ 1/2 北区立桐ヶ丘郷小学校 2018.01.19
2018年1月19日、東京都北区にある桐ヶ丘郷小学校にて、4年生65名を対象にプログラミングの考え方を使った問題解決の授業を提供しました。
小学校での授業は、昨年10月に同じ北区の袋小学校6年生に提供したものから2回めとなります。
校内へ入るとこんな案内があってびっくり。
一生に一度の経験かもしれないと思い、記念におさめてきました。
ちょうど給食後の外遊びが終わる時間で、子どもたちは大急ぎで掃除&片付けをして授業のスタンバイを手伝ってくれました。
2つのクラスに別れて、それぞれ45分間の授業です。
袋小学校でやったときには、他者の問題をどのように見つけるか?
をコンセプトにして問題発見に重きを置いていました。
今回は、問題解決の方に注目して、littleBitsを使ってアルゴリズムを学習するスタイルに変えています。
学年によって、伝えたいメッセージによって、この辺を臨機応変に変えられるのが探プロの良いところかもしれません。
テーマは『ポストはなぜ赤いのか?』
子どもたちにとって身近なものをテーマに問題解決の話を伝えるにはどうしたらよいか?
ずっと考えていたのですが、担任の先生との会話の中から意外なヒントを得てポストに辿り着きました。
東京都の4年生は社会科の時間に、明治から昭和時代にかけて東京都の基礎を築いた偉人について学ぶようなのですが
その中に、後藤新平という方がいます。
交通や衛生など、東京のインフラ環境を整える偉業を成し遂げた方ですが、記録を読んでいくと意外な情報を発見することになりました。
なんと、ポストは赤、と決定したのが後藤新平氏だったというのです。
後藤新平が人生をかけたのは社会課題の解決でした。
そして探プロが願っていることは、社会における問題を発見し、解決する力(未来を創造する力)を子どもたちが身につけることです。
全ての文脈がつながって、今回のコンテンツが出来上がりました。
担任の先生には本当に感謝です!
これが明治時代、最初に登場したポストだそうです。
そして、これが現代のポスト。
さて、一体何が変わったでしょうか??
素材、色、形、時代を経て変わったことがいくつかあります。
なぜ、変わったのでしょう?なぜ、変える必要があったのでしょう?
子どもたちに問いかけながら、一緒に考えていきます。
変える必要があった、つまり、当時のポストには問題があった、ということです。
そもそも、問題とは何でしょうか?
私は、問題には3種類あると思っています。
子どもたちにとって一番身近なのは1つめの問題でしょうか。
1+1は?愛媛県の県庁所在地は?
といったものです。
2つめの問題は、忘れ物を防ぐには?給食のお代りをGetするには?のような、問題に対する答えが何通りもあるようなものです。
今回はこの2つめの問題に着目しました。
ちなみに3つめの問題は、スマホやAIスピーカーのように、登場して初めて私たちがそれまでに感じていた不便を認識するようなものです。
誰もが問題として認識していないものを発見し、問題だと定義できるかどうか?
いわゆる発想力が求められるところもあり、ロジカルに突き詰めるだけでは見えてこないものですが、子どもたちには是非、こうした問題にこそチャレンジしてほしいと思っています。
探プロのコンテンツとしてもいつか、提供できたらと考えています。
さて、この2つめの問題についてもう少し補足します。
問題ってたくさんあります。
先生や親から指摘されたことや、自分で気づいたこと、友だちから相談を受けたこと、ニュースで見たこと、あれもこれも問題だとして、一体どれを解決すれば良いのか?
たくさんある問題の中から、取り組むべき問題を見つけるための軸を考えてみます。
その問題は誰にとっての問題か?
その問題はどれくらい解決を急いでいるのか?
この軸でみると、右上が所謂、社会課題と言われるエリアで、後藤新平が注目したのもこのエリアであることが分かります。
君たちも是非、後藤新平のようにたくさんの人の役に立つ問題解決にチャレンジしてほしい、という願いをこめてお伝えしました。
さて、問題とは何か?解決すべき問題はどうやって見つけるのか?
について説明した後は、いよいよ問題解決についての解説と実践に移ります。
その2へつづく。
【レポート】プログラミングで問題解決~ポストはなぜ赤いのか?~ 2/2 北区立桐ヶ丘郷小学校 2018.01.19
次は問題解決のお話です。
明治時代のポストに問題があることは分かりました。
では、どのように解決するか?
解決の手順としては、まず最初に原因を探ります。
これだけで何時間でも話せそうですが、原因の深掘りはテーマではないので軽めに。
そして、どのようにすれば原因を取り除けるかを考えます。
ここでは、素材を変えること、色を変えること、が問題解決の手段でした。
これから伝えるプログラミングというのも、同じように問題解決の手段になり得るものです、という形でプログラミングの話に移ります。
プログラムは命令の集まりです。
そのプログラムを実行するコンピュータは、いつも同じ結果を出します。
1+1を計算せよ、とコンピュータに命令すれば、必ず「2」と答えます。
プログラムのバグがない限りいつでも必ず同じ結果を出すことができます。
一方で、君たちはどうでしょうか?
先生や親から言われた命令に対して、いつも同じ結果を出すことができますか??
ここで苦笑しながら首を横にふる正直な子どもたち(笑)
何が違うのでしょう?
コンピュータにあって君たちにないものは何でしょう?
それは、アルゴリズムです。
このアルゴリズムを、littleBitsを使って実際に体験してみます。
littleBitsは本当に良い教材だなぁ、と今回あらためて実感しました。
アルゴリズムの学習をするのには、紙と鉛筆だけでも良いのですが、動きがないと結果を実感し難いので小学生には物足りません。
かといって、パソコンを使って実際のプログラミングをしながらでは覚えるべきことが多すぎてアルゴリズムだけにフォーカスして学習するのが難しくなってしまいます。
その点、littleBitsならアルゴリズムだけの学習に専念できますし、手を使って実際に動きを確かめながら理解を進められるので学習効果はとても高いと思います。
当日はアルゴリズムの基本である3つの構造について、littleBitsのモジュールを組み合わせながらプログラミングを体験してもらったのですが、初めての子どもたちにとっては適度に難しかったようです。
なかなか、モジュールを組み合わせる「順番」や「ルール」を意識することに辿り着きません。
工作であれば、電源に繋いでライトがつけばそれでOKなのかもしれません。
でも、「スイッチをONにしたら、まず白色のライトをつけて、次に赤色のライトをつける」アルゴリズムを作るのだから、決められた通りに動くように「順番」を決めなければいけません。
「スイッチをONにしたら、白色のライトと赤色のライトをずっとつけ続ける」アルゴリズムを作るのだから、白色のライトも赤色のライトもどちらも点きっぱなしになるように「ルール」を決めなければいけません。
ものすごく単純なことをやっているだけなのですが、言葉で示すことと、実際に手を動かすこと、そして結果を出すことの全て繋げるのは意外と難しいです。
やってみると7割くらいの子たちが不正解だったので、自力で解決できるように少しずつ個別にヒントを出しながら進めました。
すると、あちこちから
「あ、そういうことか!」「なるほど!」「できた!」
といった声があがります。
こうやって失敗→成功の体験を積み重ねることで、身体にアルゴリズムを染み込ませることができると良いですね。
アルゴリズムがあれば自分たちも確実に結果を出せるようになるのだから!
最後に、これまでに学んだアルゴリズムを使ってこんな問題を解いてみます。
あともう1コマ時間があれば、この先を一緒に考えたいところでしたが、残念ながら時間切れ。
解決サンプルを1つ紹介してこの日の授業は終わりとなりました。
終了後、子どもたちからは「またやりたい!」のリクエストをたくさんもらいました。
もちろん嬉しいのですが、何より、先生方がこの重要性に気づいて評価してくださることがそれ以上に嬉しいです。
あぁ、プログラミング学習っていうのは新しくて難しそうで自分には分からないと思っていたけど、それ私知ってるわ、という気付き。
子どもたちの問題なんだから、本当は子どもたちが自分で解決策を考えなきゃいけないのに、先生たちは忙しさを理由につい、答えを与えてしまう。
それでは考える力は育たない。
解決策を教えるのではなくアルゴリズムを教えてあげれば、自分で解決できるようなるのではないか?という気付き。
多様性というのは、答えは一つではないということ
だとすれば、3つめ、4つめの答えを自分の頭で考えられることが重要になる。
このときに、アルゴリズムをはじめとするプログラミングの考え方を知っていて
それを共通言語として使いこなすことができるとしたら、生産的な問題解決ができますね
という校長先生からのフィードバックはプログラミング学習をこれから取り入れていこうとする学校にとって、とても重要なポイントを含んでいると思います。
終了後、今回の学習を担任の先生がこんな形でまとめてくださいました。
「プログラミング」と聞くとすぐに「コンピュータ」という発想になりがちですが、そうではなく
『いろいろな学習場面や生活場面で問題点を見つけ、それを解決していくためにはどうしたらよいのか。
また、どんな順番でどんなルールをもって解決していくのが効率的かつ確実なのか。』
という思考過程であることを学びました。
探プロで伝えたいことを汲み取って見事にまとめて頂き、嬉しい限りです。
問題発見のところをもっと深掘りするのも面白そうですし、現代のポストを解決するところもやってみたいし、子どもたちが妙に関心をもっていた(笑)忘れ物を防ぐには?という問題にもチャレンジしてみたい。
今回の授業をきっかけに、さまざまな発展形を描くことができそうです。
頑張って機会を作りますね!
桐ヶ丘郷小学校の皆さま、ありがとうございました!
【ワークショップレポート】変身する公園をつくろう!
1/21(日)は久しぶりの探プロワークショップ(オープン)でした。
前回が11月の沼津での開催だったので、2ヶ月ぶりとなります。
そして気づかなかったのですが、ちょうど1年前はこんなワークショップをやっていたのでした。
一年前のこの日は初めての幼児向けプログラムを開催した日でしたね。
思いきってスタートしたこの「楽しい家をつくろう!」を皮切りに、2017年はたくさんの方々にお会いすることができました。
そして2018年。
公園をつくろう、のワークショップは実は1年半ぶりの開催でした。
他のプログラムと違って、このテーマは「ポリモフィズム」という少し変わったプログラミングの考え方を学ぶものになっています。
この考え方を活用することで、モノゴトを効率的に考える、創ることができるようになることを期待しています。
ポリモフィズムの考え方を取り入れている身近なものの例として、今回は「公園」をとりあげました。
ベンチとカマド、この2つの共通点はなんでしょう?
子どもたちからは、足がついている、上にモノを乗せる、などが出ました。
そして、その共通点を活かして別の用途にも使えるように造られたのが『かまどベンチ』です。
もう1つ。こちらはどうでしょう?
マンホールとトイレ。共通点は?
穴に流す、蓋がついている、などがでました。
このように、1つのものがいろんな用途に使えたら『効率が良い』ですよね。
簡単な言葉では一石二鳥、とも。
AとBの共通点は何か?
形を大きく変えずに変身させることはできないか?
そんなことを考えると、思いがけないアイデアが生まれることでしょうし、プログラミングの世界では
他の用途にも使いまわせるプログラムは効率的な設計ができている、と評価されます。
さて、そんなわけで今日のワークショップは「変身する公園をつくろう!」だったのですが、今回初めて和室会場での開催となりました。
雰囲気はこんな感じ。
小さなお子さんがヨチヨチと歩きまわったり、大人や子どもが自由に移動したりできる空間は和室ならでは、だと思います。
テーブルと椅子、のスペースではどうしても居場所が固定されてしまって、場合によっては保護者は遠巻きに見ているだけ、になることもあるのですよね。
今回は大人も子どもも、かなり熱中して取り組んでいたと思います。
和室開催良いですね!
最初はlittleBitsを使いこなすのに苦戦していた子どもたちでしたが、時間が経つにつれてどんどん使えるようになり、最終的には非常に興味深い作品をたくさん作ってくれました。
まずはこちら。
女の子2人組が作ったのはブランコと鉄棒。
littleBitsのモーターを使うことで、ちゃんと回転するんですよ。すごい。
続いてこちらは兄と弟で作った大作です。
向かって左端にあるのは風車、かと思いきや人が乗れるメリーゴーランドのようなアトラクション。
その回転を利用して発電し、真ん中にあるグローブ・ジャングルを猛スピードで回転させ、さらに隣にあるもう一つの風車(弟作)を回転させるという巨大装置でした。
他にも、遊びながら音楽を鳴らしたりライトアップしたりするシーソー(お母さん作)
遊び疲れたら泊まっていける公園(1階が宿泊スペース)。
光る噴水
はたまた、移動公園なんていうアイデアもありました。
今回面白い作品がたくさん生まれたのですが、「変身させる」ところまではなかなかいきませんでした。
これはコンテンツの方に問題があるなぁ、と反省です。
「変身」させるための共通機能の見つけ方、それを踏まえた設計、といったところを本当に理解し、使いこなすためにはまだまだステップが必要なんですよね。
いろんな要素を盛り込みすぎてしまったことを反省して、次回はまた違ったアプローチで臨みたいと思います。
今回は公園のプロである強力なパートナーと一緒に開催だったのですが
次回もしやるとしたら、「現在の公園が抱える問題をどうやって解決するか?」「社会の抱える問題を公園を使ってどう解決するか?」
なんてことができたら面白そうだねー、なんていう話を終了後にしていました。
また違った「公園をつくろう!」がお披露目できるように、引き続き頑張ろうと思います。
ご参加くださった皆様、ありがとうございました!