【セミナー報告】 ゲーム vs ワークショップ!?:"楽しい学び”を生み出すテクノロジーを探る 2/2
私たちが遊んでいるゲームは、先の必須要素を満たすと共に、楽しく、継続して遊んでもらえるようにデザインされています。
この辺の話も、ゲーム自体に大した思い入れがない(なぜだろう・・)私にとって、ゲームをデザインする際の発想や思考自体が新鮮なものでした。
ゲームデザインの手順として紹介されたのは以下です。
■STEP①
- ゲームの構成要素を決める
- 体験させたい、面白い経験を考える
- ゲームのコア活動を決める
■STEP②
- 可視的・数量的なゴールを作る
■STEP③
- 行動と結果のミクロなルールを作る
- ゴールにつながるマクロなルールを作る
ここで重要なことは、この手順で考えれば面白いゲームが作れる、というものではないということです。
実は逆で、自分が面白いと思えるゲームを素因数分解して、なぜこのゲームは面白いのか?どこに特徴があるのか?
といったことを、先の手順に倣って考えてみることの方が重要でした。
だから、ゲームデザインを上達させたいのであれば
- 普段から「面白い経験」を探そう
- 可視化・数量化する方法を探そう
- 普段からゲームを遊んで分析し、ルールを知ろう
といった説明にはとても説得力があります。
いくつか紹介されたゲームの中で、探プロにも活用できそうだと思ったのが「Identik」。
言葉だけを使って他者に絵を説明し、どれだけ伝わったかを競うゲームで、実際にワークとして私たちもやってみました。
ゲームとしてIdentikを魅力的にしているのは、恐らくSTEP②の「可視的・数量的なゴールを作る」を実現しているからで、感性で捉えがちな「絵」というものを評価する仕組みを定量化したところに面白さがあるのだと思います。
たとえば、オブジェクトAの色は青く塗られているか?オブジェクトBはオブジェクトCの右側に描かれているか?
といった具合で5つの確認項目が提示され、描けていれば1点ずつ加算しグループ内で平均をとってグループ間で点数を競いました。
絵という抽象的で評価しづらいものであっても、可視的で数量的なゴールを設定し、ルールとフィードバックの仕方を工夫することによって十分にゲームとなり得るのですね。
絵でも出来るのであれば、これは当然ながらプログラミング学習にも応用できるはずです。
たとえば、littleBitsを使って作られた電子回路をみて、その回路を口頭でメンバーに伝え、メンバーは各自で説明を元に回路を再現する、といったゲームが考えられます。
回路をアルゴリズムと捉えれば、適切にアルゴリズムを理解し、伝えられる能力が求められるわけで、十分に思考力が鍛えられると期待できます。
アルゴリズム的な思考力に加えて、コミュニケーション(どういう言い回しが分かりやすいか?伝わりやすいか?話す順番は?)の能力も必要になってくるので、これは探プロのコンセプトの中にも取り入れやすいゲームだと思いました。
余談ですが、ゲームらしさとは何か?といった話の中に、"失敗を楽しくする"という考え方が紹介されていて印象的だったのでメモしておきます。
マリオゲームの中でgame overになってマリオが沈んでいくシーンのように、ゲームの中での失敗は、コミカルに楽しく表現されるといいます。
失敗経験を心地よいフィードバックとして伝えることで、楽しさの実感を増やしているのですね。
これはプログラミング学習でいうところのエラー解決で使えるかもしれません。
エラーが発生して思い通りに動かないとき、デバッグをして問題を解決するわけですが、如何せんこのエラーの発生というのは良い気分がしないのです。
子ども向けのプログラミング言語として使われているScratchでは、エラーを体験することがないわけですが、より本格的なコーディングに進むときにはこの問題を避けて通れません。
そうであれば、始めからこのエラーやデバッグというものを"楽しいもの"、"もっとやってみたくなるもの"として位置付けることが大切かもしれないなぁ、と思いました。
(ちなみに私は、エラーが起きたりデバッグしたりするのは謎解きのゲームがスタートするようでとても好きです)
いずれそういった学習プログラムを開発する際の参考に、頭の隅に置いておきたいトピックです。
後半には、ブルームの教育目標分類に対してのゲーム活用例とか、ゲーム学習のデザインフレームワーク、といったものも紹介されたのですが、、、
この辺は難しくてよく分からなかったので割愛します。
そうそう、ワークショップの観点からどうしても安斎先生にお聞きしたかったことがあったので最後に。
これから、子ども向けのプログラミング学習をテーマとしたワークショップをやっていこうと考えているわけですが、子ども向けのワークショップをする上で主催者側における"成功した実感"とはどのようなものだろう?
ということを考えています。
大人と違って自由に考え動き回る子どもたちを相手に、大人ですらよく理解していないプログラミングというものを学習させる上では、何を持って成功したというのか?
を見極めることがとても難しいし、同時に重要なことだと思っています。
(まさかテストして確認するわけにもいかないので)
子どもたちが楽しそうな表情で夢中になる姿が見られたり、「楽しかった!」と言えばそれが成功かといえば、違うと思うんですよね。
そんな話をしたところ
- ワークショップのあと、子どもたちが自分のやったことを人に伝えたくなればそれを成功とするのも一つ
- 子どもたちには、きっと伝わっていると信じる
といった回答を頂きました。
とくに2つ目が印象的で、すぐに成果を出したくなる気持ちを抑えて、時間がかかっても、いつか、彼ら彼女らのどこかで役に立ってくれると信じる、ということは、特に子ども向けのワークショップを主催する上で重要ですね。
これまで私の中にはどこかしら、分かるかな?きっと分かっていないだろうな?
という不安や疑問があったのは事実です。
そうではなく、きっといつか腑に落ちるときがくる、思い出してくれるときがくる、と信じて向き合っていこう
そんなことを考えました。
今回の研究会の中で出たトピックからは、新しい学習プログラムのヒントをたくさんもらうことができました。
プログラミング教育という狭い世界に閉じて考えるよりも、少し視野を広げる方が面白いものができるし、より本質に近づける気がします。