学校の現場でプログラミングを教えるということ
昨日、知り合いに繋いで頂いて、公立小学校の校長先生に探プロを紹介させて頂きました。
理工系の大学を卒業したあともずっとIT業界一筋に過ごしている私にとって
教育の現場というのはとても遠い存在で
子どもが小学校に入学したことでかろうじて接点を持てている
とそんな程度です。
積極的に教育に携わるつもりなど毛頭なかったのですが、いよいよ学校教育にもプログラミングが加わるときいて
なんだかいてもたってもいられず、探プロを作って、ときどき教育業界の様子も伺ったりする
そんなこの頃でした。
それが突然、ご縁を頂き、初対面の校長先生に探プロをプレゼンするということで
どの辺りが響くのだろうかと試行錯誤した結果、とりあえずぶつかってみようと思い臨みました。
プログラミング学習に関する知識はあまりお持ちではない方なのですが、一方で、数年前から算数の授業を中心にESDという手法を取り入れて研究を続けられている熱心な先生でした。
ESD(Education for Sustainable Development):文部科学省
具体的には、授業を4つの時間に区切って構成するのだそうです。
①問題をつかむ時間
②考える時間
③他者と協力する時間
④伝える時間
※正確な用語ではないかもしれませんが、だいたいこういった内容でした
学校で目指しているのは21世紀型スキルそのもの(ICTを除く)ですし、この授業の構成はモデリングから始まる探プロの学習フレームワークとの親和性があり、ワークショップの形に落とし込むとほぼ同じ構成であることも分かりました。
小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ):文部科学省
文科省のレポートによれば、プログラミングは、既存科目に取り込む形で各学校が設計する方針です。
その観点からみると、この学校の授業の中に探プロを組み込むことはとても良さそう、と感じましたし、校長先生にもそこは納得してくださいました。
校長先生が力説していたのは、現場では授業の形がかなり出来上がっている状態にも関わらず、上から、あれやらこれやれ、と次から次へと注文が入るのでとても大変である、ということです。
特にプログラミングに関しては、別の時間をとるにしても、既存科目に取り込むにしても
全然イメージがわかないとのこと。
ESDは問題解決型の教育なので算数から始めているけれど、先日は音楽の授業にも取り入れてみたそうです。
その話を聞いていたら、探プロの学習フレームワークそのものでしたし、ワークショップの形式がそっくり当てはまりそうと分かって何ら違和感ありませんでした。
そこで、探プロの学習フレームワークの始めにやっているモデリングのステップでは
問題を見つける前に子どもたちの世界観を広げるため、さまざまな情報を子どもたちに伝え
その上で、自分が問題だと思うものを見つけることを期待している
という話をしました。
例えば社会科の授業の中で、探プロの街づくりの学習プログラムを使う
という形で取り込めると思いますよ
とお伝えしたところ、それまでとは打って変わって興味をもってくれました(笑)
実は前半戦では、これまでに実施した探プロのワークショップをいくつか紹介したのですが
「ぜんぜん響かない。ただの工作に見える。どこがプログラミング?」
と厳しいツッコミがあり、危うくそのまま追い返されるところでした(苦笑)
また、子どもたちは何を学んでいるのかその時に分からなくても、いつか気づいてくれたら良いと思っている、という私の意見に対しても
学校の教育では、それはダメ。
子どもたちに、いま、何をしようとしているのかを正しく伝えるべきだし
何を修得できたのか評価できなければいけないのだと。
この点において、楽しさを求めるワークショップ型のプログラミング学習と、学校教育としてのプログラミング学習は、決定的に違うのだと思い知りました。
そして、littleBitsの使い方についても、ワークショップに興味をもって参加する子どもたちと
公立の小学校に通う子どもたちでは
アプローチを変えないと単なる遊びになるだろう
というアドバイスもありました。
プログラミングが「命令」をうまく扱うことなのだとすれば、それを意識させた上でlittleBitsを使わせないと、動いて楽しい、で終わってしまうと。
実際、私がやっているワークショップも大半はそのレベルなのですが...
意識した上で使いこなす、というところを探プロでは目指しているので、それがちゃんと出来ていないという意味で痛いところを突かれたなという感じです(苦笑)
こうしたことを踏まえてまとめると、学校向けには、こんな感じで伝えるのが良さそうです。
■プログラミング学習とは一体何で、何を得るものなのか?
プログラムは「命令」の集まりであることを知り、プログラムを使いこなす(≒プログラミング)ための様々な思考(=プログラミング的思考)を学び、活用することによって、21世紀型スキル(4つのチカラ)を手に入れる
■具体的にどう学習させるのか?
探プロはプログラミングスキルではなく、プログラミングを概念として学ぶ(=プログラミング的思考)ものなので
各教科(社会あたりが分かりやすそう)の中で、その思考を活用できる場面に取り込みます。
たとえば、3年生の社会科の単元に「まち」をテーマにした学習があるので、その中で、街を構成している様々な要素の繋がり、というものを、プログラミング的思考で捉えるとどう説明できるか?といった感じです
街について学びながら同時に、モジュール化やインタフェースといったプログラミングの設計で使う思考を学び、多様なものを繋ぐ際に考える適切な粒度や、接続の仕様を事前に考えることの重要性、などを実感できたら理想的です。
これこそ、既存科目にプログラミング学習を取り入れる醍醐味ではないでしょうか。
参考までに。
探プロの学習プログラムとして用意している「街をつくろう」で学べることはこちらに詳しく書いています。
探プロが社会科との相性が良いのは間違いないのですが、算数や国語など他の科目とはどのようにシナジーを生み出すことができるのか?
とても面白そうなお題なので考えてみたいと思います。
これを読んでいる小学校の先生の中で、プログラミング学習を授業に取り入れることに興味のある方がいたら是非、一緒に考えてみませんか?