探究型プログラミング学習(探プロ)

プログラミングの考え方を学んで、未来を創る力を手に入れる

プログラミングの考え方を学んで未来を創る力を手に入れる

学びNEXTのふりかえり~探プロのコンセプトとの親和性の観点より~

先日の学びNEXTの総括です。

といっても、1時間くらいしか周れなかった(しかも見なかったブースもある)私が書くよりも

既にいくつか出ている記事をピックアップする方が有益そうなので今回はそうします。

 

STEM系の文脈で紹介している記事。

littleBitsを紹介しているのは嬉しいけれど、「なんかよく分からんが面白い」っていうまとめ方はちょっと...

学びのNEXTってそんな感じで面白さが重要だったりするのでしょうか。


レゴのWeDo 2.0がメインの記事。

レゴで子供の課題解決力を育成、小学校低学年向け教材「WeDo 2.0」 - 第7回教育ITソリューションEXPO | テクノロジー | マイナビニュース

 

レゴだし、WeDoだし、製品の安定感は抜群で、しかも教育者向けの教材やカリキュラムも充実しているし。

これからプログラミング学習を取り入れていきたいと考えている学習塾や学校にとって

まず第一候補に上がるだろうな、と思います。

ただ製品の完成度が高すぎて、探プロとのコラボレーション余地がないんですよね。

探プロのコンセプトの中で教材として使う、という活用が難しそうなので、今後も使うことはないだろうと思いますが、注目している製品であることには間違いありません。

 

続いて、こちらの記事ではソビーゴ以外は見事に、私が見なかった(見逃したものも含めて)ものばかりが掲載されています。

特に、SONYのKOOVはlittleBitsと同じようなコンセプトで使われるでしょうから、詳細はとても気になります。
プレスリリースは見ていましたが、現物が展示されていたんですね。
うっかり見逃していました・・・
 
ちょっと変わり種の展示では、ダイソンの掃除機もありました。


掃除機を分解して、中の仕組みを物理的に学ぶのだそうです。

教材を一から作らなくても、実際の製品を使うというところが目からウロコだったのと

これをキャリア教育の一環と位置づけているダイソンが素晴らしいと思いました。

とても面白い試みだと思ったので是非はなしを聞きたかったのですが、ブースに立っている方々が全く折衝する気がなさそうだったので・・・

諦めたのでした。

こういった実製品を使った学習は、探プロとの相性はとても良いと思っています。

一つ一つに分解していき、もう一度組み立てていくプロセスはそれこそ、探プロですべてが語れるはずなので。

 
導入の観点から書いているのがこちらの記事。

個人的には、学びNEXTエリアの入り口を陣取っていた、学研の「もののしくみ研究室」が非常に興味深かったです。

教材開発を担当したアーテックとともに広大な場所を陣取っていて、人だかりが出来ていました。

90分で隔週のカリキュラムがなんと3年間分、既に用意されているということで

会場には踏切や信号機のように、学習テーマに合わせた教材の活用例がたくさん展示されていました。

 

プログラミング学習というより、まさに仕組みの理解を重視した学習なので

これも探プロとの相性は良さそうだと思っています。

探プロは逆に、概念的な学習が多いですし、コーディングのステップがあるとはいえ

littleBitsではどうしても具体的な作りの段階になったときに学習が浅くなってしまうデメリットを抱えています。

 

そこでこの教材を活用できれば、概念から仕組みの理解へ繋ぎ、具体的なコーディングまでを全て充実させることができるので

とても理想的なんですね。

 

個別の製品の中では、ダイヤブロックを使ったロボット型の学習教材であるソビーゴが気になりました。

 

この製品は2種類用意されていて、1つは低年齢の子向けのブロック+iPadのソビーゴBP1。

もう1つはもう少し大きい子向けのロボット+IchigojamのソビーゴRP1。

 

ソビーゴBP1(ブロック)は、自分の手で組み立てたブロックを、そのままiPadのアプリ上でも表現することで、それがどんなアルゴリズムになっていて、どんな動きをするのかを

実際にアプリの中の人形が動くことで確認できる点がとても良いと思いました。

パソコンの中だけでコーディングしていると、なんとなく書いたものがなんとなく動いて終わり

となってしまいますが、そこをあえて、手を使ったアルゴリズムのステップを踏ませることで、理解力は格段に上がると思います。

littleBitsを使った探プロでもまさに、そのステップを重視しています。

アルゴリズム化の学習をメインとするときに、この教材を使うのも面白いかもしれません。

 

ただ、ソビーゴRP1(ロボット)の方は、あまり魅力的ではなかったんですよね・・・

これはBASIC?なのか、キーボードを使ってコードを入力していくのですが、この辺はScratchが主流の子ども向けプログラミングの中でもかなり特殊な学習をすることになると思います。

教材を全て国産品で作りたかった、という方針があったようなのでScratchが使えなかったのだと思いますが

それにしてもちょっと、ブロックとロボットの間に、すごく大きな溝があるような気がしたので、学習レベルに応じてステップアップする、といった使い方を想定するのは

少し難しいのではないかな、と感じました。

 

そういったわけで、探プロが使えそうな製品は本当に少なかったのですが

それでも、littleBits以外の教材を、どんな形で活用できるかを考えることはとても楽しかったです。

【レポート】AEA主催 littleBitsで電子工作をたのしもう 第2回

今日は久しぶりにワークショップでした。

といっても、珍しくファシリテータではなく、助っ人としての参加です。

 

普段、自分がファシリテータとして学習プログラムを設計したり仕切ったりしていると

余裕がなくてなかなか見られないところも確認するチャンス!

ということで行ってきました。

 

今回のワークショップは、埼玉県の熊谷エリアにて英語教育を中心に様々な学びの場を提供しているAEAさんが主催でした。

計4回で構成されているプログラミング学習のワークショップで、今日は2回目。

テーマは

「littleBitsで電子工作をたのしもう 第2回 プログラミングで動かしてみよう」

です。

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第1回ではlittleBitsでの自由工作を楽しんだ子どもたちが、今回は探究型プログラミング学習でいうところの、モデリングアルゴリズム化、コーディングといった学習フレームワークのさわりを少しだけ体験する構成でした。

 

内容は低学年の子に対しては少し難しめでしたが、littleBitsに慣れていることもあり

2時間のワークショップは最後まで集中力を切らさずに出来た子が多かったです。

 

20名をゆうに超える参加者が集まり、上は中学生から下は小学1年生という幅広い層でした。

今回はあまりグループワークがなかったので、個々人が自分のペースで楽しめたことも良かったと思います。

 

まずは、AEA代表の赤井さんからのご挨拶。

受験がメインストリームになっている今の教育に疑問をもち、本来あるべき学びの場を創りたいという思いで立ち上げたAEAには、探プロを創った私の想いと通じるところも多く、とても共感をもちました。

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そして、ワークショップのはじめに、この活動のアドバイザーを務めている立正大学後藤真太郎教授より、iPadを使ったScratchJrの紹介がありました。

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持参したiPadを保護者の方と一緒に覗き込んで、簡単な使い方をレクチャーしてもらったあと、もっとやりたい!という気持ちになったところで

「続きは自宅で」

と、なんとも絶妙な寸止めでした(笑)

 

そして、いよいよお待ちかねのlittleBitsを使った電子工作へと進みます。

ここからは、littleBitsを使ったワークショップのプロ集団であるデジタルハイクが担当します。

 

まずはアイスブレイク。

保護者の方も一緒になって、身の回りにあるプログラムをたくさんあげるゲームをしました。

30秒で1個、6個のマス目を埋めるのは意外と難しかったようで、保護者の方も子どもたちと同じように悩んでいましたね(笑)

 

そのあと、懐中電灯のような身近なものの動きをアルゴリズムで意識しながらlittleBitsで組み立てるワークをやりました。

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これまでのワークショップにはない試みでしたが、littleBitsをどのように活用するのか?

ということを理解してもらうにはとても有効なワークだったと思います。

 

そして、いよいよ工作へ。

各自で信号機や踏切など、街にある様々なものをlittleBitsを使って工作しました。

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短い時間ではありましたが、だいたい5~6個のパーツを使って、littleBitsをうまく活用した工作ができていたように思います。

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次回の6月にはいよいよ、第2回で学習したことを活用して街づくりに挑みます。

既に、次回の申し込みをお子さん自らが決定して名前を記入していた、という話を聞いて驚きました。

楽しみにしてくれている子がたくさんいるようで嬉しいです!

 

この後、探究型プログラミング学習のワークショップとしては、以前の会場だった日の出ファクトリーさんを使わせて頂いて

littleBits入門編、街をつくろう!(前編・後編)、公園をつくろう!(前編・後編)

をそれぞれ実施する予定となっています。

今のところ仮の日程ですが、6月5日(日)、6月11日(土)のそれぞれ午前・午後を使う予定です。

 

近日中にご案内しますのでお待ち下さい!

「学びNEXT」が示す学びとは?NEXTとは?

3日間に渡って開かれた教育ITソリューションも終わり、イベントの記事が少しずつ出てきているようなので

それらを楽しみつつ、私が見てきた別会場の学びNEXTのエリアの紹介も、少しずつ進めていこうと思っています。

 

今回はその前に、この学びNEXTのエリアを回っていたときに感じた2つの違和感を書きます。

1つは「NEXT」という言葉が示すものは何か?ということ。
いま現在の学校でのスタイルが現在だとすれば、ロボットなどを使ったプログラミング学習は確かに「NEXT」なのかもしれない。
でも、どうしても唐突に登場している印象を受けてしまいます。
 
前回書いたようなアクティブ・ラーニングなんかは、旧来の一方通行なスタイルの教育と比べて双方向になった点が進化ですし
去年とても話題になっていた、反転授業やタブレットを使った学習なんかも、ITを使って従来の学習スタイルをもっと便利に、効果的に、といった進化と捉えることができます。
 
しかし、プログラミング学習というのは従来の教育のどの文脈にも乗らず
唐突に登場した印象を受けてしまうのです。
 
一番の違和感は、そこに学習のコンセプトというものが存在しないまま、製品が全面に出ていることではないか、と私は考えています。
この教材を使えば、プログラミング学習ができます、こんな能力が身につきます
と提案するだけの展示に、少なからず失望しました。
 
逆に、あまり面白みはなかったとはいえ、メイン会場の方は、アクテイブ・ラーニングなどのコンセプトが分かりやすく共有されていて
それを実現するためのソリューションなり製品、という見せ方だったのでとてもわかり易かったように感じます。
 
一体、NEXTで示したい次世代の学びとは何なのか?
私には
ロボット教材を使ったプログラミング学習がNEXTである
と見えていましたが、実際にイベントへ行かれた方はどんな感想を持たれたでしょうか?
 
探究型プログラミング学習というのは
プログラミングとは何か?
プログラミングを学習するとは何か?
というところから突き詰めて考えていって、21世紀型スキルを修得することを目的に
学習のためのコンセプトをゼロから作り上げています。
(だから、扱う製品の優先度は低くて、あくまでも学習を実現する手段の1つとして位置づけています)
 
私が知りたかったのは、そういった次世代の教育における新しいコンセプトであり
探究型プログラミング学習がさらに次を見据えるのだとしたら、何を考えるべきなのか?
そういったヒントになる情報だったのですが、残念ながら見つけることができませんでした。。。
 

もう一つの違和感は、「学び」と名付ける以上、その主体は学び手であるはずなのに、ここに並ぶ製品やソリューションの多くは教育者の視点になっていないか?

ということです。

 

少し前にこんなことを書きました。

どの製品も興味深いものではあったのですが、何れもこの自由度においては非常に低いのではないかと感じました。
せっかくのブロック教材なのに、作れる型が既に何パターンか用意されていて
ご丁寧に、作り方や指導者向けの解説書までが用意されているのをみて
とても教育者的な発想だなぁ、と思ったのです。
 
ただ逆に、そうした製品は学校や学習塾など、これからプログラミング学習をサービスとして取り入れたい人たちにとっては有益なものであるはずです。
指導者のハードルは低ければ低いほど良く、それでいて子どもたちがそれなりに学習効果を発揮できるのであれば、それが現実解なのかもしれない、とも思いました。
 
この点はトレードオフだと考えています。
自由度の高い教材を使い、モデリングのように解のないところから始まる探究型プログラミング学習では
ゴールが決まっていないし、何が正解なのかもわからない。
そうした中での学習に意義はあると信じているけれど、一方で広く展開することは難しい。
 
ここに大きなジレンマがあるんですよね・・・
 
そんなことを考えていたとき、これは究極の自由度だと思えるコンセプトに出会いました。
それは、World Peace Game という世界の課題解決をテーマにした教育型シミュレーションプログラムを考案したジョン・ハンター氏のいう「empty space」。


話の中では、古ぼけた1つのテーブル、として登場します。
あれもこれもと詰め込むのではなく、新しい発見や気づき、考えのために、あえて空けておくスペース。
 
それは時間だったり、物理的なリソースだったり、学習面での余裕だったり。
いろいろな意味で使えると思うのですが、このスペースこそが学びの土台であり
私たちは、このスペースの上で子どもたちが自由に学びを構築するように、ほんの少しの手助けをすることが重要ではないかな、と思いました。
 
漠然としていた「学び」というイメージが、このempty spaceの概念を加えることで
私にとってはとてもクリアになったように感じます。
日本でも活動を開始したWorld Peace Gameは、いま私が一番注目している教育の一つなのです。

このWorld Peace Game と探究型プログラミング学習は、21世紀型スキルの修得という点において、双方が足りないところを補える関係にあると考えていて
実現できたら恐らく、どこにも負けない学習プログラムが作れるのでは?
と期待しています。
 
もしかしたら、それこそが「学びNEXT」かもしれません。
@tanpro-lab