探究型プログラミング学習を通じて体験してほしい「楽しさ」とは何か?
昨日の出来事がきっかけとなって "楽しい" について考えたので少し書いてみます。
自分で主催したものや、お手伝いしているものも含めて、この1年間で何度かのワークショップに携わりましたが、いずれにおいても
子どもたちはとても楽しそう
でした。
実際に、アンケートでもその点を評価してくださる保護者の方がとても多いです。
夢中になって没頭している様子や、友だちと賑やかに手を動かしている様子は、確かに楽しそうだし、終了後も「またやりたい!」という声をたくさん聞きます。
それはそれで良いと思います。
純粋に、「楽しかった!」と言う子どもたちの表情はとても明るいからです。
ただ、その「楽しい」は私が求めている「楽しい」とはどこか違うな、ということをずっと感じています。
修士研究に教育をテーマとするよう決めたとき、最初のきっかけは
学ぶことの楽しさを伝えたい
という想いでした。
私は物心ついてからずっと、大学を卒業するまで一度も、勉強する、学ぶことを楽しいと思ったことがありませんでした。
一度も、自ら学びたいとか、もっと学びたい、ということを感じることがなかったんですよね。
それが、SEとして社会人生活をスタートしてしばらく経ったとき、コンピュータの世界観やプログラミングについてものすごく興味をもって
強烈に、「もっと知りたい、もっとやってみたい」と思うようになりました。
大学でも同じことをやっていたはずなのですが、、、
恐らく違いは、これまでは勉強しなければいけないことを与えられていて、それに応えているだけだったのだと思います。
そこに楽しさは見いだせなかった。
それが社会人になって、自分の興味のあることを、好きなだけ時間を使って好きなように学んで良くなり、それで初めて学ぶことの楽しさを知ったのだと思います。
物事を突き詰めていくときのワクワクする感じや、次から次へと生まれる疑問に答えを見つけたいと思う気持ちなど
いま、子どもたちに体験してほしいと考えている学びを私自身は、大人になってからしか体験することができませんでした。
だから、その楽しさを少しでも早く知ってほしい、という想いが私の中にあります。
それで、教育という大きなテーマでスタートしたわけですが、次第に
学ぶことの楽しさ、とは要するに何を楽しいと感じているのか?
ということを考えるようになりました。
それでこれまでの人生の中で、その楽しさを実感したのはいつだっただろう?
と振り返ってみると
この3つのタイミングだったと思い当たりました。
共通するのは、
これまで見えなかったものが見えるようになった
ということです。
プログラミングといえば機械的でコードが並ぶ何ら面白みのない作業
だったのが、オブジェクト指向の概念を知ったことで急に、身近な世界との類似性が見えるようになりました。
とはいえ、相変わらずプログラミングの世界だけでは現実社会との繋がりが分かりづらかったのですが、オブジェクト指向モデリングを使うことで、複雑で分かりづらい業務や企業の構造を概念として可視化することができるようになりました。
それでだいぶ、システムの世界と現実の世界が繋がるようになったのですが、それでもなお、システム化という枠組みの中だけで捉えていたので何か釈然としないものが残っていましたんですね。
それが、大学院でビジネスモデルの考え方を学んだことによってようやく、現実社会の仕組みが見えるようになりました。
普通、事業に携わっている人であれば、トップダウンでビジネスモデルを捉えるのだと思いますが、私の場合はプログラミングのレイヤーからボトムアップで捉えたので
ビジネスモデルの概念と、その具体的な実現形式が、かなりクリアな形で繋がり、見えるようになったことがかなり特異なケースではないかと思っています。
そういった気づきを通じて
プログラミングの世界観と、実社会の世界観は類似していて、同じように捉えることができる
と考えるようになりましたし、探究型プログラミング学習の根底にはこの思想があります。
ちなみに、探究型プログラミング学習のサブタイトルに「世界をプログラミングする」と書いているのはそれが理由です。
だから、探究型プログラミング学習とは一体何か?何のためにあるのか?
について考え始めたとき、最初にビジョンを定めておこうと決めました。
モノゴトの本質を見極める力の自律的な修得を通じて
未来を創造する子を増やします。
未来を創造する、とは21世紀型スキルのことです。
(21世紀型スキルという言葉は何を示すのか分かりづらいので「未来を創る力」と言い換えているため)
さいしょにある「モノゴトの本質を見極める力」というのがつまり
見えなかったものが見えるようになることであり、それを楽しめること
と捉えています。
つまり探究型プログラミング学習では、プログラミングの世界と現実の世界を同じように捉えることで、その楽しさを実感し、自らが未来を創造する力を修得する子が一人でも多く育ってほしいと願っているのです。
ただ残念なことに、まだまだ力不足でその「楽しい」を子どもたちに体験してもらうところまで辿り着けていません。
そういう意味では、探究型プログラミング学習が目指すところまでへの道のりはまだまだ遠い、のだと思います。
と、ここまでは抽象的な話ばかりで分かりづらいと思うので・・・
次は実際に、たとえば先日の「街をつくろう」ではどのような本質をプログラミングによって捉えているのか?
について書いてみます。