2020年の小学校で子どもたちが体験するプログラミング学習とは、どのような形なのでしょうか?
子ども向けのプログラミング学習に方向性を定めて、本格的にテーマとして設定したのが今からちょうど一年くらい前のことです。
当時と比べると、子どもにもプログラミングを、という話はだいぶ裾野が広がってきたように感じます。
例えば、4月19日に発表された小中学校でのプログラミング学習の必修化がニュースになったり。
例えば、NHKでプログラミングをテーマとした子ども向けの番組が放映されたり。
といった感じで、プログラミング学習とは一部の技術好きの男の子にだけウケるものではなく、性別問わず、広く対象となることが伝わるようになってきました。
そうした中で、プログラミング学習とは一体何か?
子どもたちに一体何を伝え、何を修得させようとしているのか?
改めて議論する土壌が出来つつあるようにも感じています。
プログラミング学習とは何か?
いまの日本では、パソコンやタブレットなどを使ってコンピュータサイエンスやコーディング手法を学ぶ形が主流です。
先日の5月5日に実施された各地でのイベントは、どれも盛況だったという話が聞こえてきますし
プログラミングに興味をもって楽しむ子どもや大人が増えることは、新しい文化を築くという意味でとても良いことだと思います。
しかし、1年前の当時から今でもなお、私の中に存在し続ける違和感があります。
それは例えば、子どもたちがパソコンやタブレットに向かって笑顔を向ける写真であったり
例えば、自分の作ったScratchやMinecraftのアプリやゲームを大人の前でプレゼンする子どもたちの姿であったり。
例えば、3歳からプログラミング脳を!などというサブタイトルをつけて売り出している積み木型などの玩具であったり。
何れも、「こんな子どもに育ってくれたらいいと思いませんか?」という一つの未来の姿を提案されているのでしょうし
より強く、「これからの時代は、ICTを使いこなして自分でプログラミングして新しいサービスやモノを作り出すことが求められている」
ということを親である私たちに伝えようとしているのだと私は捉えています。
おおまかな方向性としては間違っていないでしょうから否定するつもりはないのですが、一人の親として、またIT業界で長年仕事を続けている一人の社会人として
一体どこにどのような違和感をおぼえているのか?
ということをきちんと可視化した上で、違和感のない形とは何か?
を提案したいというのが、探究型プログラミング学習を生み出す最初のきっかけとなりました。
冒頭に書いたように、2020年には小学校でもプログラミング学習が必修化されようとしています。
今から4年後の小学校で、子どもたちは一体どのような教育を受けることになるのでしょうか?
ちょっと、想像してみてください。
プログラミングの時間になると、パソコン教室へ移動もしくは自席でタブレットを取り出し
先生の指導の元に1つずつ操作を覚えたり、友だち同士で教え合ったりしながら、アプリやゲームを作っている姿を。
具体的なカリキュラムや指導内容が決まるのはこれからですが、すでに先行してプログラミング学習を実施している先進校では、そのようなシーンが公開されていたので
大まかには同じような形を念頭に置きながら指導案などを作ることになるのではないか?と予想しています。
こういったシーンが、本当に望ましい教育の姿なのでしょうか?
とある小学校の公開授業で、タブレットを持った子どもたちが行儀よく並んで先生の話を聞いている姿をみたときに
プログラミングを教えている、教えてもらっている、という構図がありありと見えてきて、なんて教育者的発想だろう、と感じました。
一方、私の息子が通う小学校で、体積をテーマに取り上げていた算数の授業はとても印象的でした。
ペットボトルと水を使って、手を動かして容量をはかりながら、その大きさを体感する学習をしていたのです。
自分のもっているペットボトルと、友だちのもっているペットボトルは、形や大きさが少しずつ違っていて、入る容量も違うということを、水をこぼして大騒ぎしながらも
たかが体積の話でここまで盛り上がれるのか?
と感心するほど楽しそうに実験していました。
両者を比べてみたときに、次世代の教育であるはずのプログラミングの方が、よほど時代遅れの教育スタイルになってはいないか?
と感じました。
読み、書き、プログラミング、という言葉がありますが、基本的な教養としてプログラミングを修得させようとすること自体は、恐らく間違っていないと思います。
問題は、プログラミングを修得することが一体、将来の子どもたちにとってどのように役に立つのか?
が相変わらず見えてこないところではないでしょうか。
読み、書き、と同じレベルで使いこなすということは、教室で教えてもらったプログラミングを日常のあらゆるシーンで活かすことが期待されているはずですが
一体どのように活用することになるのか?
具体的にイメージできている人がどれくらいいるのでしょうか。
教育者として子どもたちにプログラミングを教えることになる現場の教師の多くは、日常の中でプログラミングを活用する経験などしていないはずです。
そのような人たちから、子どもたちは一体何を学ぶことになるのでしょうか。
探究型プログラミング学習では、学習を通じて修得するスキルとその修得プロセスを定めているので
学習の結果、どんなスキルが身について、そのスキルが何に役立つのかが明確になっています。
さらに、コーディングの具体的な手法を修得する部分を除けば、専門的なコンピュータサイエンスの知識や経験をさほど必要とはしません。
むしろ、子どもたちの思考力であったり、コミュニケーション力であったり、社会を知る力であったり、といったこれまでの教育の延長線上にある様々なスキルを修得させるための促しは
現場で日々、子どもたちと向き合っている教師こそが相応しいはず、だと信じています。
探究型プログラミング学習にはいろいろな側面があります。
そのうちの1つは、学習のファシリテータとして想定しているのが、学校や学習塾などで子どもたちの学習に向き合っている指導者たちである、という点であり
従来のプログラミング学習とは大きく異るところでもあります。
2020年からの必修化に向けて、指導者の育成が大きな課題となることは明白です。
その解決策の1つとして探究型プログラミング学習を提案できるように、これから少しずつ情報発信を続けていこうと思っています。