【セミナー報告】金沢工業大学 数理工教育セミナー 1/2
2016年3月19日(土)に、金沢工業大学の金沢工業大学数理工教育研究センターが主催する数理工教育セミナーがありました。
金沢まで行くことができなかったので、虎ノ門キャンパスでの遠隔視聴です。
アクティブ・ラーニングという用語はだいぶ浸透してきたように思いますが、今回は高校を中心とした教育現場での活用事例や現状を共有することが目的のセミナーでした。
『探究型プログラミング学習』は小学生をターゲットとしているので、高校でどのような授業がなされているのか、これからどちらの方向へ向かおうとしているのか?
といったことに興味を持っての視聴です。
午前中のトップバッターは、京都大学大学院の石井英真先生による「今、なぜアクティブ・ラーニングなのか」です。
学習指導要領の改訂の動向から、これからの教育が向かおうとする方向性について非常に分かりやすい解説がありました。
アクティブ・ラーニング(能動的学習)とは、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習です。
余談ですが、『探究型プログラミング学習』においてもアクティブ・ラーニングの考え方を踏襲しています。
次の学習指導要領の改訂では高校の改革が重視されていて、大学から始まったアクティブ・ラーニングの採用が、これからはより低学年に対しても取込まれていくことになるとのことです。
しかし小学校の場合、すでに十分にアクティブな授業を実施しているので、これ以上何をやるの?といった反応が懸念される、という話がありました。
この懸念に対しては、いまの小学校があまり注力していなかった、「問題の発見」や「コラボレーション・協働」といった観点を積極的に取り入れていくことになるのではないか、ということでした。
そうした話を踏まえると、『探究型プログラミング学習』のコンセプトの1つである学習フレームワーク(MAC)のモデリングのステップにおいて、解決すべき問題を自ら発見することを重視している考え方であったり、他者と協働しながらICTを活用して問題を解決しようとする考え方は、これからの教育に求められているのだとあらためて理解することができました。
また、アクティブ・ラーニングを重視するこうした流れが、受動的な学習から、学習者主体の学習へといった大きな方向性の変化であることを踏まえると、やはり「プログラミング教育」よりも「プログラミング学習」なのだろうな、と思います。
今回の話の中で、『探究型プログラミング学習』の観点から興味深いことが2つありました。
1つは、思考力の重要性と社会性との関係。
思考力を鍛えるには、思考の方法を教えるのではなく、まずは思考したくなる対象・文脈を発見させ、思考の必然性を作り、そして深く思考する経験を繰り返すことによって実現できるといいます。
このとき、思考したくなる対象を見つけることが重要で、その対象はできるだけ身近にある社会をテーマにするのが良い、という話でした。
ここはまさに、『探究型プログラミング学習』のコンセプトの中でも非常に重視しているところなので共感できます。
もう1つは、ICT活用の話です。
ICTを活用する上では、活用する目的を考えるところが重要なのだと。
話の中に「コトバの革命」といったキーワードが出てきました。
各自が考えて、それを紙に書いて、お互いに発表し合うスタイルは「話し言葉中心」よりも、自身の思考を記録しながら考える、話をしながら書く、のようにそれぞれを分断させずに一緒にやる「書き言葉中心」のスタイルの方が、新しい発見が生れる可能性が高まる、ということでした。
そして、ここにICTをうまく活用するのが良いのだといいます。
『探究型プログラミング学習』のコンセプトに基づいてプログラミングを学習する場合、考える、書く(コーディング)は常に同時並行です。
さらに書いたことはアルゴリズムとして可視化することによって、思考を記録することができますし、チームで1つのものを作る場合には、話をしながら書く(コーディング)ことになるので、とても良い学習になるだろうな、ということがあらためて分かりました。
さいごに、非常に印象深かった話を記録しておきます。
正解のある問題は、誰かに教えてもらえば良いが、正解のない問題には、納得解を、みんなでつくることが重要であり、意味がある。
これこそ、アクティブ・ラーニングの醍醐味だと感じました。