探究型プログラミング学習(探プロ)

プログラミングの考え方を学んで、未来を創る力を手に入れる

プログラミングの考え方を学んで未来を創る力を手に入れる

新学習指導要領案では情報活用のためのリテラシーとして扱われているプログラミング

2017年2月14日に公開された、2020年度より全面実施される新学習指導要領案が話題です。


小学校でプログラミングが必修化されることが明らかになった2016年6月の有識者会議のまとめがこちら。

小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議:文部科学省

 

そこから、2016年12月には中央教育審議会にて答申のとりまとめが公表されました。

幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号):文部科学省

 

なお、中教審答申の中で記載されているプログラミングに関する話題は、こちらにまとめられたものが詳しいです。

中教審答申おける小学校でのプログラミング教育に関する記述のまとめ

 

有識者会議や中教審答申の内容を読むと、問題発見や解決における手段としてプログラミングの「思考」に注目していることが分かります。

探プロでもこの思想には全面的に賛成でした。

ただし、「プログラミング的思考」という言葉に関しては、その定義も含めて分かりづらく、またプログラミングによって得られるスキルの幅を狭めかねないことから、あまり好ましくないと考えていました。

 

ところが、新学習指導要領案を読んでみて驚きました。

プログラミングによって「思考」を学び、それを問題解決に活かす、のではなく、単に情報活用の手段として活かす、すなわちICTリテラシーとして位置づけられているのです。

また、プログラミングする=論理的思考力を身につける、といった非常にシンプルな構造になってしまっています。

 

具体的には、このような記載があります。

  • 第1章 総則 3 教育過程の編成における共通的事項

(3) 第2の2の(1)に示す情報活用能力の育成を図るため,各学校において, コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必 要な環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。また,各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適 切な活用を図ること。 あわせて,各教科等の特質に応じて,次の学習活動を計画的に実施する こと。 ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要と なる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動 イ 児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理 を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動 

 ちなみに、ここで参照している情報活用能力とはここで記載されています。

  • 第1章 総則 2 教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

(1) 各学校においては,児童の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質 ・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を生かしつつ, 教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。 

つまりプログラミングは、問題発見・解決能力等の学習には位置づけられていないのです。

何かの間違いかと思って一通り読んでみたのですが、各教科の中でプログラミングをどう活用するか?といった例の中では、いずれも情報活用に特化したものでした。

コンピュータ活用、すなわちICTリテラシーの習得、といった文脈で書かれており、そこに無理やり、プログラミングを利用した学習をくっつけた印象を受けます。

 

たとえば、算数ではこんな活用例が提示されています。

(2) 数量や図形についての感覚を豊かにしたり,表やグラフを用いて表現す る力を高めたりするなどのため,必要な場面においてコンピュータなどを 適切に活用すること。また,第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプ ログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための活動を行う 場合には,児童の負担に配慮しつつ,例えば第2の各学年の内容の〔第5 学年〕の「B図形」の(1)における正多角形の作図を行う学習に関連して, 正確な繰り返し作業を行う必要があり,更に一部を変えることでいろいろ な正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと 

やりたいことは分かりますが、これではプログラミングを学習する理由を説明できませんし、そもそもどの辺が論理的思考力につながるのかも分かりません。

恐らくとても複雑な学習環境になるので、かえって混乱するのではないでしょうか...

 

理科だとこんな感じです。

(2) 観察,実験などの指導に当たっては,指導内容に応じてコンピュータや 情報通信ネットワークなどを適切に活用できるようにすること。また,第 1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論 理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には,児童の負担に配 慮しつつ,例えば第2の各学年の内容の〔第6学年〕の「A物質・エネル ギー」の(4)における電気の性質や働きを利用した道具があることを捉える学習など,与えた条件に応じて動作していることを考察し,更に条件を 変えることにより,動作が変化することについて考える場面で取り扱うも のとする。 

これもプログラミングや論理的思考力との繋がりが分かりづらいです。

 

唯一、総合的な学習の時間に記載された以下の部分だけは、学習の広がりを感じます。

(9) 情報に関する学習を行う際には,探究的な学習に取り組むことを通して, 情報を収集・整理・発信したり,情報が日常生活や社会に与える影響を考 えたりするなどの学習活動が行われるようにすること。第1章総則の第3 の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身 に付けるための学習活動を行う場合には,プログラミングを体験すること が,探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること。

 

プログラミングを情報活用の手段と位置づけ、論理的思考力を身につけることを目的としたこの指導案は、プログラミングを学習する理由の説明が不足しているように感じます。

 

教育者ではないので憶測ですが、恐らく、既存教科の学習においても論理的思考力を養う場面はたくさんあるはずで、プログラミングを取り入れることが、その力を進化させることに繋がるのかどうかが不明です。

だとすると、何のためにこんな面倒なことに取り組むのだろう??

と疑問に思う先生たちがいても不思議ではないです。

 

プログラミングを情報活用の手段と位置づけてしまっているところが、大きな間違いのように思うのですが、なぜこうなってしまったのでしょうか?

 

3月15日まで、パブリックコメントを受け付けているようです。

意見がどう扱われるのかは未知数ですが、やらないよりはまし...

論点の整理がてら、このBlogでもあらためて学校教育でのプログラミングについて書いてっみようと思います。

@tanpro-lab