プログラミング学習の目的を考える(評価編) 2/2
前回の記事ではプログラミング学習の「目的」に注目し、探究学習における学習目的の考え方を紹介しました。
今回は、プログラミング学習の目的を評価の観点から考えてみます。
先日、興味深い記事を見つけました。
インタビューを受けているMITメディアラボのミッチェル・レズニック氏は、
私のゴールは一貫して、表現手段としてのプログラミングなのです。
(中略)
本当に大事なのは、目的は何かをきちんと把握することです。私の場合は、子どもたちが「クリエイティブ・シンカー」(創造的発想力を身に付けた人)になることです。
と言っています。
この目的の位置づけには、とても共感します。
多くの場合、プログラミングを学ぶことによって論理的思考力を身につける、と いった目的が設定されますが
プログラミングを「正しく」学んだ場合は、創造的発想力に加えて、論理的思考力も身に付くと思います。論理的思考力が目的の場合においても、算数に加えてプログラミングを学ぶのは有効でしょう。学びに対する意味付け、動機付けという点でプログラミングが役立つからです。
という回答も非常に的を得ていると思います。
そうでないと、論理的思考力を身につけることが目的なら、プログラミングでなくても良いのでは?という意見に反論できないので。
学びに対する動機づけ、という点でも共感します。
この記事では詳細に書かれていませんが、ここでいう動機づけは恐らく、試行錯誤しながらも問題解決に向かって進んでいくプロセスを体験することや、論理的に考えることが、他の学習の効果をさらに高めることに繋がる、という意味だと解釈しています。
探プロの場合、この動機づけのところは少しニュアンスが異なります。
詳しくは以前にも書きました。
複雑な問題に取り組むからこそ
他者との協働に価値が生まれることが理解できるのであり
これこそが、学びに対するモチベーションとなり
学びそのものを楽しむことに繋がる
私は自身の経験から
難しい問題にチャレンジすること、解決するには他者と協力しなければいけないこと、仲間と共に乗り越えることが学びを楽しむことに繋がる
と考えています。
なので探プロのワークショップでは、こうした体験ができるような学習プログラムを設計しているつもりです。
ここが、パソコンやタブレットを使って一人でプログラミングを学習する他との大きな違いだと思っています。
先の記事に戻ると、個人的に最も共感したのがこの部分でした。
本当に重要なことは定量化できないのです。
純粋にプログラミングスキルを身につけることが目的であれば、正確で効率の良いプログラムをどれくらいのスピードで書くことができるか?
といった指標をもてば、とりあえず評価することはできそうです。
(それでも完全に定量化することは難しいでしょうが。。。)
しかし、目的が「クリエイティブかどうか?」であったり、探プロのように21世紀型スキル(=未来を創る力)の修得を目指す場合には、定量評価はもちろん、定性評価であっても非常に難しいです。
この点でも、前回紹介したTCSでの探究学習が参考になります。
TCSでは、各テーマ学習ごとにその本質の理解を目的として設定しています。
例えば、2016年度のテーマ一覧はこんな感じです。
子どもたちが学習内容の本質を理解したかどうかは、学習の過程や最終日の発表を見ることで判断できるのだそうです。
理解すべきことが明確に設定されているので、学習を通じてそこにたどり着いているかどうかを評価する。
実際の評価には高度なスキルや指導者同士の偏りが生じないようナレッジ化やフレームワーク化する工夫が必須だとは思いますが、それでも、学習効果をはかるやり方として非常に良いと思いました。
探プロでいえば、21世紀型スキル(=未来を創る力)の修得が大目的であり、そこに紐づく形で用意される各学習プログラムには、それぞれの学習目的が設定されます。
学習を通じて、論理的思考力や発想力がどの程度上がったのか?
を評価することは難しいけれど
理解してほしかった本質に辿り着けたか?
ということは判断できそうです。
探プロではプログラミングの概念を知ることで、モノゴトの本質を見極める力を養おうとしているわけですから、目的、評価のどちらの側面からみても辻褄は合います。
プログラミング学習の評価、という観点で1つヒントをもらえた気がしました。