【セミナー報告】アクティブラーニングをより深い学びにつなげる! 〜リフレクションで創る知の世界〜 2/3
まず、立命館宇治高校の酒井先生からキャリア教育と数学科での取り組みが紹介されました。
もともと、キャリア教育の授業の中にアクティブ・ラーニングを取り入れていたそうで、次のような問題意識があったそうです。
- 学校と社会は繋がっていない
- 生徒は、サービスを受けているお客様になっている。学校から与えてもらう経験しかせずに社会へ出ている
こうした問題意識をもちながら数学科の授業の中にアクティブ・ラーニングを取り入れ始めたものの、大きな課題にぶつかります。
それは、数学への苦手意識をもたないように、生徒が理解しやすい分かりやすい授業をすればするほど、生徒は主体的に学ぶことをやめてしまう、というジレンマです。
数学の授業では本来、論理的思考や他者への伝え方、といったスキルの育成を期待しているのですが、実際に教育現場で起きているのは、
- どうすれば点数のとれる答えが導けるのか?
- どうすれば減点されない答案が書けるのか?
に注力しようとする生徒と、その質問に答えざるを得ない教師の姿だといいます。
そこで酒井先生は、教師からのレクチャーを可能な限り減らし、グループ学習などを取り込んで生徒が自分の頭で考えるスタイルに変えたところ、クラス全体の学ぶ力が非常に伸びたとのことでした。
実際に生徒たちにとったアンケートによれば
- 教える(伝える)力
- 人に聞く(教えてもらう)力
- 教科書を読む力
が身についた、という回答が多くあったのだそうです。
とはいえまだ課題は残っていて、それは主に教師側にあるといいます。
- 育てたい生徒像、つけたい力の共有
- 評価の問題(教える力は測れる!?ルーブリックを使った教師間での評価の共有)
- 教員の横のつながり
この辺を仕組みとして実現していくことが、学校全体にアクティブ・ラーニングを広めていくポイントであるという話でした。
子どもたち同士の学び合いを重視する上で、教える、教えてもらう、の経験はとても有効だと思います。
プログラミング学習は国語などの教科よりも、どちらかというと数学の方が近いと考えているので、数学の授業で実践されているアクティブ・ラーニングには非常に関心があります。
プログラミング学習の場合、アルゴリズム化やコーディングのステップでは、どうしても出来る子、出来ない子、が出てくるでしょうから、そうしたときに、チームの中で学び合いができるのが理想です。
一方で、コーディングが苦手でも、モデリングのステップでは抜群の発想力をもって皆をリードする子がいるかもしれない。
将来的には『探究型プログラミング学習』でも、そういった個性や特性を活かしたチーム学習が実現出来たら、と考えています。
つづいて、信州大学の伏木先生から教員養成の現場と海外での取り組みについての事例共有がありました。
信州大学には、平成28年度に高度教職実践専攻(教職大学院)が新設され、教員を目指す人たちが実際の学校現場での問題解決を通じて、より実践的に体験を通じた学びができるようになるのだそうです。
伏木先生曰く、順調に進学して教員を目指す人たちは自分たちの受けてきた教育を正だと捉えている傾向があり、さらに学校で学んだことをそのまま現場に適用しようとするのだそうです。
そこで、現場での実経験を通じて、自分の受けてきた教育は選択肢の1つでしかないことを理解してもらいたいと言います。
伏木先生ご自身も、かつて小中高で教壇に立っていた経験があるそうですが、そうした経験を踏まえて、自立ではなく自律(Autonomy)、自己学習能力の育成を目指し、アクティブに学ばされるのではなく、あくまでも主体的に自分の学びをデザインすることを目指したい、といった言葉には説得力がありました。
そのために教員がすべきこととして2点挙げていました。
- 学ぶ側の論理に立つ(適用しようとする手法やツールは、学習者の学びたい道筋とズレていないか?を考える)
- 子どもの"問い"を中核に据えた授業づくり
このように、徹底して学習者の視点に立った教育論というのは、個人的には非常に新鮮でした。
こうした教育思想をもって実際に活用できる先生が増えることは、子どもをもつ親としても非常に嬉しいことなので、心から応援したいと思っています。
それから、海外の事例としてニュージーランドとデンマークの視察の例が紹介されました。
この視察を通じて伏木先生が得た気づきというのが面白かったのでメモしておきます。
アクティブ・ラーニングというと、とかく動いて他者と協働しながらチームで問題解決、といったイメージが強いですが、実は、個の単位で活動も十分にアクティブ・ラーニングであると。
それこそ、多様な個を受け入れる、ダイバーシティの考え方に基づけば、一人で集中して仕上げたいと考える子の想いを尊重することも、アクティブ・ラーニングの中には必要だといいます。
この視点も、非常に重要だと感じました。
他者との協働というのは、必ずしもワイワイガヤガヤと進めることばかりではないと思いますし、場合によっては、任された分野を一人で集中して極める、という役割があっても良いと思います。
アクティブ・ラーニングと言いながら、学習者が望まないスタイルに無理やり当てはめようとするのであれば、それは趣旨に反しているということを、覚えておかなければいけないですね。
続いて、いよいよ本題の深い学びについて。
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